2018/04/14

病院の友だち

パートナーの病院で友だちができた。
彼女のお連れ合いが入院していて、仕事帰りに毎晩病院に来ているという。
洗面台で手を洗っているときに、声をかけてきてくれた。
わたしはその日の仕事の具合で、昼行ったり、夜行ったりしている。

夜行ったときに、なんとなく廊下ですれ違ったり、ネズミのピープのTシャツを見て反応してくれたり。
ちなみにピープは絵本『ようこそロイドホテルへ』の主人公のネズミ。
病室は季節を問わず一定の室温なので、看護師さんたちはずっと半袖だ。
リハビリしていると汗ばむこともある。

20時の面会時間ギリギリまでいて、彼女と2人川沿いの八分咲きの夜桜の下を一緒に歩いた。
その日はすこし肌寒くて、屋台のお好み焼きを買って食べた。

5月いっぱいくらいで退院して自宅で療養生活を送る予定だという。
生活環境も仕事もパートナーの病状もまったく違ったけれど、
まっすぐに目を見て話しができた。
出会って間もないのにわたしのことを「お母さん的な存在」だと。確かに年上だけどせめて「お姉さん」にしてほしい。
夜の病院に彼女がいなくなるのは、喜ばしいことなのだが、すこし物足りない。

周りの人に話しても「おきのどくに」で終わってしまうから、話しても「しかたがない」と彼女は言った。
たまたま彼女の体験がわたしの体験と重なることがあったから、彼女の経てきた時間を共有することができた。

人はそれぞれ限られた空間と時間で生きている。自分が体験したことだけしか「共有」できないとしたら、なんと狭く浅く小さいことか。
たとえば、東日本大震災の被災地で暮らす人のこと。被災地には「しかたがない」があふれていると……ずっと被災地に関わり続けている人が言った。

「しかたがない」で終わらせない世の中ために、わたしは本を、子どもの本を作り続けていこうと思う。

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ヨレヨレになってしまったピープTシャツ
『ようこそロイドホテルへ』シリーズ「未来への記憶」(野坂悦子作 牡丹靖佳画 玉川大学出版部刊)
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2018/04/04

白い花の記憶

新緑がまぶしい。庭に白い花たちが咲いた。

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ドウダンツツジ

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シロヤマブキ

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オトコヨウゾメ

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アオダモ

アオダモ以外は、去年もたぶん咲いていたはずなのに……思い起こせない。

このところパートナーの夜間中学関係の仲間が、相次いでお見舞いに来てくれた。
江東のSさん、京都のTさん、大阪のIさんにSさん。ありがとうございます。
翌日「○○さんが来てくれたね」と声をかけると、とてもうれしそうに笑う。
その笑顔を見ると、いろんなごちゃごちゃなどいっきに吹き飛んでしまう。

2018/03/30

歩いていこう

桜吹雪が舞い、木々の芽吹きが美しい。Solaの事務所にスタッフが常駐するようになって、1年以上が過ぎた。パートナーと2人で切り盛りしていたときは、パートナーが事務所に常駐、わたしは自室か外にいることがほとんどだった。
パートナーが入院して最初のころは、1人で事務所にいることが耐えられなかった。いまでも情けないことに夜1人で事務所にいるのが得意ではない。
2017年の2月から2人のスタッフが交代で平日の9時〜17時まで常駐するようになった。そのあと5月にもう1人増え、3人になった。スタッフNは機転が利く。スタッフYは交渉力に長けている。スタッフJはじっくり物事に取り組む。
3人とも本作りは未経験だったが、「本」の周辺で学び、仕事をしてきた。もうひとりWEB担当のSFは最後まであきらめない底力がある。苦しい1年を一緒に歩いてくれた。ほかにも、外部のデザイナー、編集者、校正者に支えられている。
スタッフSFが6月、スタッフYが10月に出産を控え、新しいメンバーが2人加わることになった。4月中にはスタッフブログにメンバーの紹介をアップする予定だ。

今回のアルバイト募集(1名の補充)に際して、以下の「条件」で周囲に声をかけたところ、複数名の応募があった。

・翻訳、創作などに携わっている、携わりたい人。児童書、本が好きな人を望む。
・年齢・性別問わず。
・編集・校正の技能は後付けでOK。希望者には日本エディタースクールの通信講座(半年)を会社負担で受講。
・企画の提案も可能。自分が翻訳したい本、書いた作品などをSolaの企画として検討することも可能。

ありがたい。これも何かの縁。どこかでみなとつながっていかれればと思う。

スタッフSFが産休中は強力な助っ人が来てくれることになった。スタッフYは外部スタッフという形で関わってくれる。

昨年は目の前のことをこなすだけであっという間に時間が過ぎてしまった。今年も気がつけば4月。ときには遠くに視線を移して歩いていこう。パートナーと一緒に。

Solaいたずら専門スタッフ タンスだって買い物袋だってキャリーバッグだって入ります。
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庭のアセビの花が咲いた
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2018/03/20

共感をもつこと 児図研 福井学習会

3月18日・19日、福井市で開かれた2017年度の児童図書館研究会全国学習会に参加した。基調講演は東京子ども図書館名誉理事長の松岡享子さん。「「子どもと本」をつなぐあなたへ 若手図書館員の質問にこたえて」と題して、福井の若手図書館員からの4つの質問にこたえる形で話が進められた。質問は「1 子どもにすすめたい本と、子ども自身が手に取る本とのギャップを埋めるには?」「2 ブックスタート、おはなし会などのよさを知ってもらうには?」「3 図書館員としてどのように自己研鑽していくか?」「4 図書館にとって大事なことを人に伝えるためには?」。
最初に若手図書館員から県内の公共図書館の状況(職員数、雇用形態など)説明があり、4つの質問が投げかけられた。
「1」の質問にこたえるなかで、松岡さんは「読んでもらいたくない本をよく読んだのか」「子どもが放っておいても手にとる本をなんで読みたがるのか、子どもが惹かれる理由を自分であるていど共感できるか」と述べた。何が魅力で子どもがこの本を読むのか共感をもち、その要素にかなう別の本(すすめたい本)を探してみること。

わたしが参加した第3分科会は「ぴったりの本を、ティーンズを主にして探る」(講師:川上博幸)というテーマで、事前に課題が出ていた。「学校や図書館でのティーンズとの関わりで印象に残った事例」など4つの質問があがっていた。ティーンズとの関わりがほとんどなく、図書館などの現場ももっていない。YAも最近読んでいない。ひとまず「ティーンズにぜひ読んでほしいと思った作品」という4つめの質問を友人の娘さん(中2。4月で中3)に聞いてみた。中学では不動の図書委員。好きな作家御三家は、有川浩・海堂尊・三浦しをん。

『ノッキンオン・ロックドドア』青崎有吾 徳間書店
〈NO.6〉シリーズ あさのあつこ 講談社
〈図書館戦争〉シリーズ 有川浩 角川書店
『紙コップのオリオン』市川朔久子 講談社
『西の善き魔女』荻原規子 角川書店
〈RDG レッドデータガール〉シリーズ 荻原規子 角川書店 ●
〈チーム・バチスタ〉シリーズ 海堂尊 宝島社
★『何様』朝井リョウ 新潮社
『傘をもたない蟻たちは』加藤シゲアキ 角川書店
〈5分後に意外な結末〉シリーズ 学研プラス
〈妖怪アパートの幽雅な日常〉シリーズ 香月日輪 講談社 ●
〈一瞬の風になれ〉シリーズ 佐藤多佳子 講談社 ●
〈東京バンドワゴン〉シリーズ 小路幸也 集英社
『君の膵臓をたべたい』住野よる 双葉社
『かがみの孤城』辻村深月 ポプラ社
『ハケンアニメ! 』辻村深月 マガジンハウス
『さよならドビュッシー』中山七里 宝島社
〈都会のトム&ソーヤ〉シリーズ はやみねかおる 講談社
『ナミヤ雑貨店の奇蹟 』東野圭吾 角川書店
★『容疑者Xの献身』東野圭吾 文藝春秋
『鉄のしぶきがはねる』まはら三桃 講談社 ●
★『風が強く吹いている』三浦しをん 新潮社 ●
〈レイン〉シリーズ 吉野匠 アルファポリス
〈氷菓〉シリーズ 米澤穂信 角川文庫
〈陽気なギャングが地球を回す〉シリーズ 伊坂幸太郎 祥伝社
『46番目の密室』(火村シリーズ) 有栖川有栖 講談社
★『虹を待つ彼女』逸木裕 KADOKAWA
『君が電話をかけていた場所』三秋縋  KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
〈ソードアート・オンライン〉シリーズ 川原 礫  KADOKAWA
『あと少し、もう少し』瀬尾まいこ 新潮社
『虚人たち』筒井康隆 中央公論社 

数におどろき、4冊にしぼってもらった(★印)。
学習会前に読んでみようと思いながら、読めず、課題も学習会前夜(23時とか)に送信したというありさま。
このなかでわたしが読んでいるのは●印。
共感をもつにいたらず。

ちなみにわたしがあげたのは以下。
『靴を売るシンデレラ』ジョーン・バウアー 灰島かり訳 小学館 
〈DIVE!!〉シリーズ 森絵都 角川書店
〈一瞬の風になれ〉シリーズ 佐藤多佳子 講談社
『風が強く吹いている』三浦しをん 新潮社

第3分科会で川上さんは「そのときにそのひとのなかで血となり肉となる本を届けるのが児童図書館員のたしなみ」だという。児童文学も一般文学も楽しめる年齢に、その年齢でしか読めない本をすすめる。もちろんその年齢でなくても「読む」ことはできるのだが、ぴったりのタイミングで読むにふさわしい本は、確かにある。
『未明』という同人誌を作っていた高校1年のわたしは、福永武彦『草の花』、ヘッセ『車輪の下』、志賀直哉『城之崎にて』を読んでいた。そのあと、読み返したことはたぶんない。

共感し、寄り添いつつ、毅然とする。
ティーンズに届くのは「言葉」だけではないのだろう。届ける人の存在そのもの。ティーンズのころの自分は、だれの言うこともきかなかった。

会場で久しぶりにお目にかかった松岡さんから「名簿にお名前があったから、近くの公園に座ってあなたとお話ししたことを思い出していた」と。ほんの一時期東京子ども図書館の職員だった。不良職員だった。Solaから発行した『がんばれ! 児童図書館員』(杉山きく子)という本があるのだが、おかげさまで刷りを重ね、一昨年東京子ども図書館から出ることになった。まだ動いているようで、よかった。

福井駅前の動く恐竜たち。
フクイラプトル
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フクイサウルス
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フクイティタン
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杉山きく子『がんばれ! 児童図書館員』東京子ども図書館
2018/03/11

夜間中学のこと

昨年12月、「江東区に夜間中学・日本語学級を作る会」のMさんとNさんがパートナーのお見舞いにきてくれた。
パートナーはライフワークとし夜間中学と識字に関わる活動をしていて、わたしが取材に訪れた江東区・枝川の「自主夜間中学」の場で出会った。ここしばらくは「自主夜間中学」の現場からは足が遠のいていたが、関西と関東の夜間中学関係者が年1回集う「夜間中学増設運動全国交流集会」の世話人を続けたり、つねにアンテナを張って関連資料の収拾に努めていた。仕事場の書棚の一角は、識字と夜間中学に関連する資料が山積みになっている。いつかまとめるつもりでいたのだと。
1990年は国連が定めた「国際識字年」。この年に『文字はいのちや、学校はたからや 国際識字年に問う』(「夜間中学増設運動全国交流集会」編 開窓社)という本が刊行された。パートナーが仲間と作った本だ。その本に掲載されたパートナーの原稿を「無断」で紹介する。怒られるかもなあ。夜間中学の本のことは、折りをみて紹介していきたい。

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めったにないことだからよく覚えているのだが、倒れる前に会いたがっていた夜間中学の仲間がいる。その人に手紙を書こうと思いながらまだ出せていない。出さなければ。
7年目の3月11日に。